かつて北海道・十勝の農村にあった 清麗な婚礼の風景を描く

シャンシャンシャンシャン…
馬橇が走り、鈴の音が響き渡る雪原。馬と共に汗を流し農業に勤しんだ時代、結婚式は農閑期の冬に行われていた。北海道・十勝に暮らす一家の長女“一子”が同じ集落に住む“豊”に惹かれ、結婚に至るまでの暮らしを、農村の情景と織り交ぜ描写した『馬橇の花嫁』は、写真を一枚一枚繋ぐように精粋だ。馬とどんころによる豆おとし、青年団の酒盛り、相撲大会や盆踊り…昭和30年代前半の十勝の風景が繊細なモノクロ映像で甦る。

前作「リトルサーカス」をカンボジアで撮り上げ、第24回上海国際映画祭金爵賞にノミネート、第30回キネコ国際映画祭で国際審査員賞を受賞した逢坂芳郎監督(十勝出身)は、この映画のために故郷・十勝へ住居を移し制作に臨んだ。第43回PFFグランプリの「ばちらぬん」の監督・主演の東盛あいか(与那国出身)が主人公“一子”を寡黙にして感情豊かに演じる。北海道の役者が脇を固め、多くの地元の人々がスタッフとして参加・協力し、約70年前の農村の景色を再現している。主題歌は、紅白歌合戦7回出場を誇る大津美子の名曲「ここに幸あり」(昭和31年)。当時18歳の大津美子の透き通った歌声と芯のある歌詞が花嫁の心情に鮮やかに重なる。


Director’s statement

「馬橇の花嫁」は帯広の写真家・荘田喜與志さんが遺した写真を見たことがきっかけで始まった作品です。やがて馬と共に厳しい寒さに耐えながら十勝の農業の基礎を築いた先代の営みを映像に遺し、地域で共有したいという思いに変わり、その思いに共感していただいた人々から多大な協力を得て完成することができました。まさに地域で作り上げた映画がここに生まれ、羽ばたこうとしています。
皆さんに映画を見ていただくことが次世代へ歴史を繋ぐことになります。応援の程よろしくお願いいたします。 

                                

     
監督・脚本 逢坂芳郎